◆VRとは?ビジネスの現場でも大きな注目を集めるVRを解説

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  Oct. 8th, 2021  

VRというとゲームの世界の話といったイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。テレビや雑誌などでゴーグル型のデバイスをつけ、ゲームを楽しんでいる姿を見かけたこともあるでしょう。しかし現在では、ビジネスのさまざまな分野においてもVRの技術を活用したサービスが提供されています。そこで今回は、VRとはどのようなものなのか説明したうえで、企業が行う研修や教育の場面でいかにVRを活用していけばよいのか、その方法についてお伝えします。

 

VRとは?

仮想現実(Virtual Reality)の略称で、360度、仮想空間への没入を可能にする技術です。仮想空間の中で、自分が入り込んだように動き回ることができるため、ゲームはもちろん、ビジネスや教育の現場でもさまざまに活用されています。

 

ARとは?

拡張現実(Augmented Reality)の略称で、デバイスを通じて現実の空間にデジタルの情報を付け加える技術です。スマートフォンのゲームアプリ、ポケモンGOやドラクエウォークのほか、写真加工アプリ、スノーなどにも使われています。

 

MRとは?

複合現実(Mixed Reality)の略称で、ARをさらに発展させた技術です。現実空間の位置情報などを検知し、デジタル情報と連動させることで、現実空間と仮想空間をミックスさせたような体験を可能にします。具体的には、ARで現実の空間に付与したデジタル情報の位置情報を算出して、近づいたり、回り込んだりすることができます。同時に複数の人間が同じデジタル空間を体験するといったことが可能です。

 

SRとは?

代替現実(Substitutional Reality)の略称で、これまでのように現実ではないことを前提として利用するものではなく、利用者にその世界を現実だと錯覚させる技術です。具体的には現実の映像の後に過去の映像を見せたり、現在と過去を織り交ぜた映像を見せたりすることで、錯覚を起こさせます。まだ実験段階で実際の活用事例は少ないものの、新たな技術として期待を集めています。

 

XRとは?

これまで説明してきたVR、AR、MRなどの技術を総称したものを表す言葉です。IT技術は著しいスピードで進化しており、3つの技術を融合したもの、VRに近いMRなど区別が難しい技術も次々と登場しています。そのため、これらを総称した技術としてXRという言葉が使われるようになりました。

VRの仕組みやVRが実現する世界

ここからはVRに焦点を合わせて、詳しく見ていきましょう。仕組みを簡単に説明したうえで、VRによってどのようなことが実現できるのか、VRを体験するために何が必要なのかについて説明します。

VRの仕組み

VRを体験するための手段としては、内側にディスプレイを内蔵したゴーグルの装着が一般的です。多くの場合、このゴーグルでは、左右の目に異なる映像が映し出されます。それぞれの目で見たものが脳でひとつの映像として合成されることによって仮想空間が立体的なものとして感じられるようになっています。

また、人間の有効視野を大きく上回る広い範囲を撮影したなかから、人が目線を向けるその一部だけをゴーグルのディスプレイに表示させます。ヘッドマウントディスプレイの場合には、3DoFもしくは6DoFのセンサーで頭の動きや傾き・位置を検知して、ディスプレイ表示と連動させます。目線を動かせばディスプレイに表示される映像も同じだけ動き、どこを見ても途切れることなく仮想空間が広がることになり、リアリティが感じられるようになっているのです。

また、最近ではアイトラッキングができる機能を備えてものがあり、目の動きをコンテンツに反映したり、検知したりすることができるハードウェアも出ています。

VRには、仮想空間に入り込み映像を見るだけのものと、実際にその仮想空間にある物体を触ったり自らが移動したりできるものがあります。物体に触る行為は、コントローラーを自分の手の代わりとして指示を与えることで可能です。移動はコントローラーを使う、ゴーグルに動きを感知するセンサーを内蔵させるといった方法で実現します。

VRによってどのようなことが実現するか

VRによって実現するものとして、すぐに思いつくのはゲームや映像ではないでしょうか。これらエンターテインメントの世界ではすでに多くのVR・AR製品が発売されています。

しかし、エンターテインメント以外の世界でもVR技術の活用は進んでいます。例えば、VRは現実では再現が難しいさまざまなシチュエーションの再現が可能です。この技術を生かし、工事現場や医療現場での研修に導入する企業が増えています。また、遠隔作業ロボットや遠隔コミュニケーションロボットにもVR技術が大きく貢献すると期待されています。

VRを体験するために必要なものとは?

VRを体験するために必要となる主な機器としては、ヘッドセットやヘッドマウントディスプレイ、VRゴーグルなどのVR機器本体。VRの世界のなかで作業や操作をするためのコントローラーやリモコン。そして、アプリを利用する際に使うスマートフォンやパソコン、ゲーム機などです。

ビジネスにおけるVRの活用方法

それでは、ビジネスの世界でVRにどのような活用方法があるのかについて説明します。また、将来的にどのようなことが可能になるのかについても触れましょう。

ビジネス現場でのVR活用方法事例

 医療現場

医療現場では医療従事者と患者それぞれでVR活用が進みつつあります。医療従事者のVR活用事例としては、「手術現場を撮影したものをもとに、実際にその場にいる感覚で行える手術研修」「認知症や統合失調症などの症状をVRで体験し、病気への理解を深める」などが挙げられます。

患者に向けたVR活用には、「VRの画面を見ながら行うリハビリ」「長期入院しているお子さんが開放感を味わうためのVRゲーム」などがあります。

 建築現場

建築現場でのVR活用は、遠隔作業と研修です。遠隔作業では危険な場所でVRを使い重機を操作するシステムが挙げられます。具体的には、重機に取り付けたカメラからの情報をリアルタイムでヘッドマウントディスプレイに表示させ、リモコンを使って重機を遠隔地から操作するものです。このシステムを使えば、オペレーターが実際の現場に赴く必要がなくなり、オペレーター1人が同じ場所にいながら複数箇所での重機操作が可能になるため、人材不足解消にも効果を発揮するでしょう。

研修では、現実では再現が難しい災害事故発生、高所からの転落などを体験し、どのような手順で解決していくかを学べます。

 工場や倉庫

工場や倉庫で行う作業手順を撮影し、新入社員に対し作業を体験させるVR活用が進んでいます。また、建設現場と同様に、火災発生や荷物転落などを体験できるものもあり、安全教育研修での活用にも期待が集まっています。

 不動産・住宅

VRを使い、実際に住宅展示場に行かなくても、自宅や不動産会社で住宅展示場にいるのと同じ体験ができるという活用法が考えられます。図面から作成した完成予想映像の中を動き回り、設計図を検証することも可能になるでしょう。

VRの将来予測

エンターテインメントだけではなく、さまざまな業界での活用が期待されているVR。では、将来の市場規模はどの程度と予測されているのでしょうか。2020年8月に株式会社富士キメラ総研が発表した「AR/VR関連市場の将来展望 2020」では、次のような予測がなされています。

 ヘッドマウントディスプレイの世界市場

VRを投影するための機器である、ヘッドマウントディスプレイは、2020年に1,914億円(見込)。これが10年後の2030年には、1兆3,272億円まで成長すると予測されています。

 BtoB、BtoBtoC向けAR/VRソリューションの国内市場

遠隔作業支援や集団研修などで採用されているAR/VRソリューションの国内市場の規模は、2020年210億円(見込)ですが、10年後の2030年には8,380億円まで成長すると予測。これらをもとに考えれば、これから10年の間にさまざまな業界でのVR活用が活発になっていくといえるでしょう。

VRのビジネス活用が当たり前となる将来はすぐ目の前に

ゲームの世界ではVRやARはすでに一般的になりつつあります。BtoC向けコンテンツの国内市場も富士キメラ総研の調査では、2030年には2019年の6.7倍に成長するとの予測もあり、今後さらに一般化していくでしょう。

そして、ゲームの世界で一般化すればそれだけVRに対する理解も進み、ビジネス活用へのスライドもスムーズになると予測できます。現時点でも医療を中心に研修や教育の場面で活用されていますが、これもさらに多くの業種、現場で活用が進んでいくでしょう。

そうした意味で競合他社との差別化を図るのであれば、できるだけ早い段階でVR活用を進めていくことをおすすめします。

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